川崎市矢向の歯医者さん、伴場歯科医院です。今回のテーマは「歯周病の病名について」です。どのような病気でも、それが病気である以上は病名がついています。
そして病名が異なるということは、それぞれの病気は別物ということになります。しかし、歯科医によっては歯肉炎と歯周病は同じだと言います。この場合、なぜ同じ病気なのに異なった病名になっているのでしょうか。
歯周病は歯の骨の病気で、歯を支える歯槽骨が溶かされる病気です。ただし発症と同時にそうなるのではなく、歯槽骨は歯周病が進行することで溶かされます。そんな歯周病の進行度は初期段階、中期段階、重度段階の三段階に分けられています。
そして歯肉炎は初期段階の歯周病のことであり、つまり歯肉炎と歯周病はイコールです。ちなみに中期段階の歯周病のことを歯周炎、重度段階の歯周病のことを歯槽膿漏とも呼びます。このため、歯肉炎と診断された場合は初期段階の歯周病だということです。
歯科医によっては歯肉炎のことを歯周病と呼びますし、一方で歯肉炎とそのまま呼ぶ歯科医もいます。ではなぜ歯科医によって病名の呼び方が異なるのか?…それについては深い意味はないと考えられます。おそらくですが、歯周病ではなく歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏と歯科医が呼ぶ場合、理由は次のどちらかでしょう。
以前は歯周病とは呼ばず、歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏とそれぞれの病名で呼んでおり、最近になってそれらを一括りにして歯周病と呼ぶようになりました。ですから経験の長い歯科医の場合、以前の呼び方がそのまま癖になっている場合があります。
患者さんに危機感を持ってもらうため、歯周病ではなく歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏と呼ぶ歯科医もいます。「炎」と表現することで炎症を連想するため症状をイメージしやすいですし、「膿みが漏れる」と表現する歯槽膿漏は歯周病に比べて深刻さが伝わると考えるからです。
歯周病は歯を失うイメージのためか、高齢の方に発症する病気だと思っている方が多いですね。しかしそれは間違いで、若くても歯周病は発症しますし、初期段階の歯周病…つまり歯肉炎に至っては小学生の子供でも発症します。
実際、小学校の歯科検診で歯肉炎と診断された経験のある方もいるでしょうが、「歯肉炎=初期段階の歯周病」である点から、歯周病は子供でも発症することが分かります。とは言え、若ければそれだけ代謝も活発ですから、歯を失うほど進行することはまずないでしょう。
歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏とも呼ばれる歯周病ですが、予防するためにはどうすれば良いのでしょうか。実は歯周病の予防方法は虫歯の予防方法と同じであり、次の三つを実践することが効果的です。
歯周病予防の基本は毎日の歯磨きですが、ただ磨くだけでは意味がありません。効率良くプラークを除去できるだけの精密な歯磨きが必要です。そのためにはデンタルフロスや歯間ブラシを使い、時にはプラークテスターを使うのも良いでしょう。
歯周病は生活習慣病であり、日常生活の中にも発症のリスクを高める要因が潜んでいます。例えば疲労やストレスは身体の免疫力を低下させ、歯周病菌に感染するリスクが高まります。さらに喫煙はその行為自体が歯周病になるリスクを高めるため、こうした要因を取り除くことも大切です。
静かなる病気と呼ばれる歯周病はいつの間にか発症して進行します。そうならないためには、定期的に検診を受けて歯周病の有無を診断してもらいましょう。また、定期検診を受けることで予防効果が高まるだけでなく、歯周病の早期発見と早期治療も可能になります。
…これら三つを確実に実践すれば大抵の歯周病は予防できますし、例え歯周病になったとしても歯周炎や歯槽膿漏など…つまり歯周病が進行する前に治療できます。
いかがでしたか?
最後に、歯周病の病名についてまとめます。
1. 歯周病の進行と病名 :歯肉炎は初期段階の歯周病を意味する
2. 病名の呼び方について :歯科医によっては歯周病ではなく歯肉炎、歯周炎など以前の呼び方をする
3. 歯周病は若くても発症する :初期段階の歯周病である歯肉炎は、小学生の子供でも発症する
4. 歯周病を予防するには :精密な歯磨き、生活習慣の改善、定期検診を受けること
これら4つのことから、歯周病の病名について分かります。まとめると、歯肉炎は歯周病と同じであり、正確には初期段階の歯周病とイコールです。では、なぜ歯肉炎や歯周病など異なった病名になっているのか?
それは、以前は歯周病と呼ばず、歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏と呼んでおり、最近になってこれら全てを一括りにして歯周病と呼ぶようになったのです。つまり、歯肉炎と歯周病の違いは「以前の呼び方か現在の呼び方かの違い」です。