川崎市矢向の歯医者さん、伴場歯科医院です。
今回のテーマは「インプラントと健康保険の適用について」です。
歯科医院に限らず、病院での治療費は健康保険が適用されるイメージがあると思います。
しかし実際には健康保険が適用されないケースもあり、それは決して稀なことではありません。
例えば、豊胸手術や脂肪吸引といった美容整形の治療費は健康保険が適用されないですからね。
ではインプラントはどうなのか?…ここではインプラントと健康保険をテーマにしたお話をしていきます。
結論から言うと、インプラントでは基本的に健康保険は適用されません。
では、歯科治療の1つであるインプラントになぜ健康保険が適用されないのでしょうか。
その答えは、健康保険適用の基準にあります。
「健康目的とした必要最低限の治療」…これが健康保険適用の基準です。
ここでインプラントを照らし合わせてみると、
インプラントは歯を失った時に行う治療ですから、「健康目的」の基準は満たしています。
しかし、その後の「必要最低限」の基準は満たしていません。審美性が高い、咬合力も高い、安定している、
インプラントの特徴であるこれらのことは、いずれも必要最低限以上の特徴を持っていますね。
つまりインプラントは健康保険適用の基準を一部満たしておらず、そのため健康保険が適用されないのです。
「インプラントでは基本的に健康保険が適用されない」…「基本的に」と表現したのは理由があり、
一部例外として健康保険が適用されるケースがあるからです。
最も、これは平成24年の4月以降から改定されたことなので、比較的新しい決まりと言えるでしょう。
ただしインプラントで健康保険を適用するには国が定めた基準を満たす必要があり、
その基準は正直言ってかなり厳しくなっています。
また、基準は患者さん側だけでなく歯科医院側にも定められたものがあります。
<患者さん側に定められている基準>
・医科の保険医療機関の主治医によって生まれつきの病気と診断され、
なおかつ顎骨の1/3以上が連続して欠損している
・腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気、もしくは事故によって顎骨の1/3以上を失っている
・顎の骨の形成不全である
…これらの場合はインプラントが必要最低限の治療と見なされるため、健康保険が適用されます。
ただし一定以上の割合の顎骨の欠損が基準になっており、その理由も事故か病気によるものに限られます。
少なくとも、審美目的の場合100%健康保険は適用されません。
<歯科医院側に定められている基準>
・病院(入院用のベッドは20床以上ある施設)になる歯科、もしくは口腔外科である
・下記のいずれかに該当する歯科医師が、常勤で2名以上配置されている
「その病院の歯科、または口腔外科で5年以上の治療経験を持つ」
「インプラント義歯の治療経験を3年以上持つ」
・当直体制、国が定めている医療機器、医薬品などの管理が整備されている
…注目すべき点は1つ目の項目です。「入院用のベッドが20床以上」という点から、
規模が大きい歯科でなければならないことが分かります。
つまり、街の歯科医院くらいの規模では確実にこの基準は満たせないでしょう。
例えインプラントで健康保険が適用されるケースでもその対象となるのは治療費のみになります。
つまりインプラントで使用する人工物の材料費、治療後に行うメンテナンスの費用、
入院になった場合(例外的な問題がなければ入院は必要ない)の入院費、これらは対象外ということです。
このため、健康保険が適用されたとしてもインプラントの費用は他の歯科治療に比べて高額です。
<医療費控除を利用しよう>
医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えた場合に納めた税金の一部が返還される制度です。
インプラントは健康保険適用の有無に関係なく、この医療費控除の対象になります。
治療時に支払った領収書やレシートの類は必ず保管しておきましょう。
インプラントと健康保険についてインターネットで調べると、
歯科医院のWEBサイトによっては「例外なく健康保険は適用されない」と断言しています。
このように間違った情報を掲載している理由は2つ考えられます。
・基準の問題で当院では健康保険が適用されないという意味の掲載
・その掲載文が平成24年4月以前に作成されたものである
…仮にインプラントで健康保険が適用される基準を満たしている場合、
それを知らずに治療してしまえば治療費に大きな差が出てしまうでしょう。
このため、間違った情報には注意してください。
いかがでしたか?
最後に、インプラントと健康保険の適用についてまとめます。
1. 基本的に健康保険は適用されない :健康保険適用の基準を一部満たしていないため
2. 健康保険が適用されるケース :患者さんと歯科医院が一定の基準を満たしている場合(本文参照)
3. 健康保険が適用されるのは治療費に限られる :材料費、メンテナンスの費用、入院費などは対象外
4. 間違った情報に注意 :平成24年4月以前の情報だと、健康保険は適用されないと断言されている
これら4つのことから、インプラントと健康保険の適用について分かります。
インプラントで健康保険が適用されるケースはその基準が厳しく、
その上基準を満たしているかどうかを自分で判断するのも困難です。
このため、病気や事故を理由にインプラントしたいと考えている人は、
その状態で健康保険が適用されるかどうかを歯科医院に相談してみましょう。