毎日なんとなく行っている歯みがき。本当に正しくできていますか?実は、間違った磨き方ではプラーク(歯垢)がしっかり落ちず、むし歯や歯周病のリスクを高めてしまいます。歯科医院での治療も大切ですが、最も基本で効果的な予防方法は、毎日のセルフケア=正しい歯みがきです。
歯みがきの目的を知ろう
私たちは毎日あたりまえのように歯みがきをしていますが、「なぜ歯みがきをするのか?」を改めて考えたことはありますか?歯みがきの一番の目的は、「プラーク(歯垢)」という細菌のかたまりを落とすことです。このプラークをきちんと取り除くことで、むし歯や歯周病から歯を守れます。
なぜ毎日みがく必要があるのか
食事をすると、お口の中にある細菌が糖分を使って「酸」をつくり出します。この酸によって歯の表面が溶けやすくなり、むし歯の原因になります。特に食後40分くらいは、歯が溶けやすい状態が続くため、この時間内にプラークを取り除くことがとても大切です。
また、寝ている間は唾液の分泌が減って、細菌が増えやすくなります。だからこそ「食べたらみがく」「寝る前には必ずみがく」という習慣をつけることが重要なのです。
プラーク(歯垢)の正体と害
プラークとは、目に見えにくい白っぽいネバネバしたかたまりで、実は生きた細菌の集まりです。この細菌たちがむし歯や歯周病を引き起こす元になります。
また、寝ている間は唾液の分泌が減って、細菌が増えやすくなります。だからこそ「食べたらみがく」「寝る前には必ずみがく」という習慣をつけることが重要なのです。
プラークは歯と同じような色をしていて気づきにくいですが、舌で触るとぬめりのような違和感を感じることがあります。これがまさにプラークです。「歯と歯の間」「歯ぐきとの境目」「かみ合わせの面」などにつきやすいので、意識してみがく必要があります。
うがいでは落とせないプラークを除去するには
プラークは水に溶けにくく、歯の表面にしっかりくっついているため、うがいだけでは落とせません。ハブラシの毛先をプラークにしっかり当てて、こすり取る必要があります。
みがき残しがないように「どの歯から始めて、どの順番でみがくか」を決めておくと、しっかりみがけるようになります。小さな動きで1本ずつ丁寧にみがくことを意識しましょう。
正しい歯みがきの基本テクニック
むし歯を防ぐためには、毎日の歯みがきで歯垢(プラーク)をしっかり取り除くことが大切です。そのためには、正しいブラッシング方法を身につけることが重要です。歯ブラシの持ち方や当て方、力の入れ具合を意識して、基本を丁寧に実践することで、むし歯や歯周病の予防効果が高まります。
ポイント① 毛先を歯の面にしっかり当てる
歯みがきで最も大切なのは、ハブラシの毛先を正しく当てることです。「歯と歯ぐきの境目」や「歯と歯の間」はプラーク(歯垢)がたまりやすい場所なので、毛先をしっかりと当てるよう意識しましょう。
ポイント② 力は「軽く」、毛先が広がらない程度に
強くゴシゴシみがく必要はありません。ハブラシの毛先が広がらない程度の軽い力(150〜200g程度)が最適です。力を入れすぎると歯や歯ぐきを傷つけてしまうので注意しましょう。鉛筆を持つような「ペングリップ」がおすすめです。
ポイント③ 小刻みに5~10mm、1~2本ずつ丁寧に
一度に広い範囲をみがくのではなく、5〜10mmくらいの幅で小刻みに、歯を1〜2本ずつ丁寧にみがきます。1か所につき20回以上動かすことを目安にしましょう。
部位別・磨きにくい場所への工夫
お口の中は、人によって歯並びや歯の形が違います。歯ブラシが届きにくい場所や、磨きにくい部分には、少し工夫を加えることでしっかりとプラークを除去できます。歯の形や場所に応じた磨き方を覚えて、全体を均等にケアすることが大切です。
でこぼこした前歯は歯ブラシを縦に
歯並びがでこぼこしている部分は、歯ブラシを縦にして、毛先を上下に細かく動かすと効果的です。1本ずつ丁寧に、歯と歯の隙間まで毛先を入れるイメージでみがきましょう。
背の低い奥歯には斜め横から
奥歯で高さが低く、ハブラシが届きにくい場合は、ハブラシを斜め横から入れて細かく動かしてください。お口を大きく開けすぎず、スペースをうまく使ってみがくのがコツです。
歯と歯ぐきの境目には45度の角度で
歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)はプラークがたまりやすい場所です。ハブラシの毛先を45度の角度に当て、小さく前後に動かすことで、細菌の温床をしっかり落とせます。歯周病予防にとても効果的です。
前歯の裏側はブラシを立てて先端を使う
前歯の裏側は歯がカーブしていて、ハブラシを横から当てても届きにくい場所です。ハブラシを縦に立てて、「先端部分(つま先やかかと)」を使って細かく動かすと、きちんとみがけます。
奥歯の噛み合わせは奥から前へ動かす
奥歯のかみ合わせ部分は、奥から前に向かって小さく動かしながら1本ずつ丁寧にみがいてください。特に利き手側の奥歯の裏は、みがき残しが多くなるので意識してみがきましょう。
歯みがきに使う道具の選び方
歯垢(プラーク)をしっかり落とすためには、自分の口に合った歯ブラシや歯みがき剤を選ぶことも大切です。ハブラシの形状や硬さ、歯みがき剤の成分など、適切な道具を使うことで、より効果的なセルフケアが可能になります。
歯ブラシは1か月に1本が目安
ハブラシは使っているうちに毛先が開いたり、弾力がなくなってきたりします。毛先が広がると歯にしっかり当たらず、プラーク除去の効果が落ちるため、1か月に1本を目安に交換しましょう。新しいハブラシのほうが、効率よく汚れを落とせます。
毛の硬さ・ヘッドの大きさは口に合わせて選ぶ
ヘッド(ブラシ部分)の大きさは、上の前歯2本分程度が目安です。奥歯をしっかり磨きたい方は、小さめのブラシが奥まで届きやすくおすすめです。毛の硬さは、歯ぐきが健康な方は「ふつう」、歯ぐきが弱っている方は「やわらかめ」が適しています。
歯みがき剤はフッ素配合を選ぶ
歯みがき剤には、汚れを落としやすくしたり、再付着を防いだりする効果があります。フッ素(フッ化物)配合のものは再石灰化を促進し、酸によって失われた成分を歯に戻す働きがあります。むし歯予防のためには、フッ素入りのものを選びましょう。
うがいは1回・少量の水で効果を高める
せっかくの薬用成分を流してしまわないよう、うがいは1回、15ml程度の水で軽く行うのが効果的です(成人の場合)。何度もうがいをすると、フッ素などの有効成分が口の中に残らず、効果が弱まってしまいます。
プラスαのセルフケア習慣
毎日の歯みがきに加えて、歯と歯の間や、寝ている間の細菌増殖への対策も行うと、より高い口腔ケア効果が得られます。むし歯や歯周病を予防するために、フロスやデンタルリンスといったアイテムも積極的に取り入れましょう。
デンタルフロスを取り入れる
ハブラシだけでは落としきれない歯と歯の間のプラークも、フロスを使えばしっかり除去できます。フロスを使うことで、プラーク除去効果が約1.5倍に高まるというデータもあります。毎日の習慣にするのがおすすめです。
歯間ブラシの使い方と対象者
歯と歯の間にすき間がある方、ブリッジが入っている方などには歯間ブラシの使用が効果的です。自分に合ったサイズを選び、無理なく使えるようにしましょう。歯ぐきを傷つけないよう、優しく動かすことが大切です。
寝る前はデンタルリンスも活用を
寝ている間は唾液の分泌が減り、細菌が繁殖しやすくなります。寝る前の歯みがきは特に念入りに行い、仕上げにデンタルリンスで殺菌するとより効果的です。お口の自浄作用が弱まる就寝中を、しっかりガードしましょう。
毎日の習慣で歯を守る
毎日の歯みがきは、むし歯や歯周病を予防するうえでとても大切です。ただし、「いつ・どうみがくか」という習慣によって、効果は大きく変わります。正しいタイミングや方法を意識しながら、日々のケアを習慣化することで、口の中をより清潔に保てます。
「食べたら歯みがき」を習慣に
食事のあとは、口の中で細菌が糖分を利用して酸を出し、歯を溶かす原因となるプラークが増えやすくなります。そのため、できるだけ食後30分以内に歯をみがくのが理想的です。
特に寝る前は唾液の分泌が減るため、細菌が繁殖しやすくなるので、就寝前の歯みがきはとくに重要です。外出中などで歯みがきが難しい場合でも、うがいやキシリトールガム、お茶などで口の中をリセットする工夫をしましょう。
みがく順番を決めるとみがき残しが減る
毎回違う順番で歯みがきをしていると、つい一部をみがき忘れてしまうことがあります。「奥歯の右側からスタートして、最後に前歯の裏をみがく」など、自分なりに順番を決めて習慣化することで、みがき残しを防げます。歯の裏側や奥歯、歯と歯の間などは汚れがたまりやすいので、意識的に順番を作って取り組むことがポイントです。
就寝前はとくに丁寧に
夜寝ている間は唾液の分泌が減り、細菌が活発になりやすくなります。そのため、就寝前の歯みがきは1日の中でもっとも丁寧に行うべき時間です。少し時間をかけて、すべての歯の表・裏・噛み合わせを意識しながら、1本ずつみがくようにしましょう。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシ、舌みがきなども併用すると、さらに効果的です。
毎日の正しい歯みがきが、未来の健康を守る
むし歯や歯周病を防ぐ第一歩は、毎日の丁寧な歯みがきです。正しい毛先の当て方、力加減、動かし方を意識するだけで、プラーク除去の効果は大きく変わります。
伴場歯科医院では、「できるだけ削らない・抜かない治療」を大切にしています。そのためには、ご自身が日頃から予防に取り組むことがとても重要です。わからないことや不安な点があれば、お気軽にご相談ください。
あなたの毎日のケアが、大切な歯を守る一番の近道です。