「突然、夜中に歯がズキズキして眠れない」「休日に歯が腫れてつらいのに、どこの歯医者も開いていない」こんな経験はありませんか?歯の痛みはある日突然、そして時間を選ばずに襲ってきます。平日昼間であればかかりつけの歯科医院に行けますが、夜間や休日の場合は「どうすればいいのか分からない」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、夜間や休日に歯が痛くなった時の対処法や、応急処置の方法、受診先の探し方などをわかりやすく解説します。歯科医院が閉まっている間の正しい対処法を知っておくことで、不安を減らし、無駄な出費や受診の失敗を避けることにもつながります。いざというとき、ぜひ参考にしてください。
夜間・休日に歯が痛くなったらどうすればいい?
多くの歯科医院は、平日の日中しか診療していないため、夜間や休日の急な歯のトラブルに対応するのは難しいのが現状です。痛みを我慢しきれない場合の基本的な対応や、受診先をどう探すか、まず何をすべきかを順に説明します。
まず冷静に痛みの状況を把握する
夜間や休日に歯の痛みが出ると、つい焦ってしまいがちです。しかし、まずは落ち着いて「どこが」「どのように」痛むのかを確認しましょう。
- 冷たいものがしみるのか
- 何もしていなくてもズキズキ痛むのか…神経の炎症や根の病気の可能性
- 噛んだときだけ痛みがあるのか…歯の亀裂や根の炎症、食べかすの圧迫など
- 歯ぐきが腫れているのか…膿が溜まっている可能性
- 顔が腫れている、熱がある、口が開かないなどの重い症状があるか
情報が整理できれば、応急処置や直ちに受診すべきかの判断に役立ちます。また、診察時にもスムーズに症状を伝えられるため、適切な治療につながりやすくなります。顔の腫れや発熱、息苦しさなどの全身症状を伴う場合は、単なる歯の痛みとは異なる重篤な病状かもしれません。早期の受診が必要になることもあります。
一般的な歯科医院は夜間・休日は休診が多い
日本国内にある多くの歯科医院は、個人経営のクリニックが主体です。そのため、診療時間は平日の午前〜夕方に限られ、夜間や日曜・祝日は休診している場合がほとんどになります。
大型連休や年末年始は特に注意が必要で、定期的に通っているかかりつけ医院がすぐに対応できないケースが多々あります。いざという時のために、事前に夜間や休日の診療体制について調べておきましょう。
各地域の歯科医師会による当番診療
都道府県や市町村ごとに、歯科医師会が行政と連携して休日・夜間の当番制診療を実施している場合があります。これは、歯科医師会に所属する複数の歯科医院が交代で診療を担当し、休日や夜間でも応急処置が受けられるようにする制度です。
たとえば、「〇〇県歯科医師会」「〇〇市歯科医師会」といった名称で公式サイトが設けられているため、Googleなどで
「(地域名) 歯科医師会 休日診療」
と検索すれば、当日の当番医の情報が確認できることもあります。
こうした施設では、応急処置や痛み止め・抗生物質の投薬が中心となり、継続的な治療は後日、かかりつけの歯科医院で行う必要があります。一時的な対応ではありますが、痛みの軽減や感染の拡大防止などに非常に有効です。
救急車を呼んでも歯痛は治らない?
歯の痛みが強く、「もう我慢できない」「救急車を呼んだ方がいいのでは?」と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし、歯の痛みに対して救急車を利用するのは適切ではないのです。
救急車では歯科の治療は基本的にできない
救急車で運ばれるのは、命に関わる重篤な症状がある場合が基本です。歯痛で救急外来を受診しても、多くの一般病院や救急病院には歯科医が常駐しておらず、歯科用レントゲンや治療機器も完備されていません。そのため、できるのは症状の緩和を目的とした鎮痛剤の処方程度にとどまり、根本的な治療は不可能です。
夜間救急では、歯の痛みの原因を正確に診断するための検査(例えば口腔内のX線撮影など)も困難なことが多いです。また、救急車を呼ぶことで医療現場のリソースを圧迫してしまうかもしれません。歯の痛みだけを理由に救急車を要請するのは避けましょう。
命に関わる症状があるときは例外
とはいえ、すべての歯科関連の症状が救急車の対象外というわけではありません。次のような重篤な症状を伴う場合には、ためらわずに119番に通報してください。
- 歯ぐきや顔の腫れが急激に広がり、喉や首まで腫れてきている
- 呼吸がしにくい、息苦しい、飲み込みづらいなどの症状がある
- 高熱や全身の倦怠感を伴っている
- 意識がもうろうとしている
これらの症状は歯の炎症が深部に波及し、気道を圧迫するなどの緊急性の高い状態に陥っているかもしれません。また、「蜂窩織炎」や「深頸部感染症」などの重篤な感染症の疑いもあります。このような時は、夜間や休日でも即座に医療機関を受診しましょう。
自宅でできる歯痛の応急処置
夜間や休日に急な歯の痛みが起こったとき、すぐに歯科医院を受診できない場合もあります。そんなときのために、自宅でできる一時的な対処法を知っておくと安心です。
ただし、これらの方法はあくまでも「応急処置」であり、痛みの原因を根本的に治すものではありません。症状が軽くなっても、必ず後日歯科医院を受診しましょう。
1. 口腔内を清潔に保つ
まずは、歯や歯ぐきのまわりに食べかすや汚れが残っていないかを確認しましょう。「食片圧入(しょくへんあつにゅう)」と呼ばれる現象では、歯と歯の間に詰まった食べかすが歯ぐきを刺激して痛みを引き起こすことがあります。
- やわらかめの歯ブラシでやさしくブラッシング
- デンタルフロスや歯間ブラシで歯の隙間を清掃
- うがい薬や水で口をしっかりゆすぐ
強くこすったり、爪楊枝など尖ったもので触れたりすると症状が悪化する可能性もあるので、丁寧かつ慎重に清掃してください。
2. 患部を冷やす
腫れや痛みがある場合は、外側(頬側)から患部を冷やすことで炎症を抑えられます。
- タオルで包んだ保冷剤を頬にあてる
- 熱さまシートなどを半分に切って使用するのも有効
氷を直接当てたり、急激に冷やしたりするのは避けましょう。逆に温めてしまうと血流が増えて痛みが増すこともあります。入浴やホットドリンクなども注意が必要です。
3. 市販の鎮痛剤を使用する
市販の解熱鎮痛剤を服用することで、一時的に痛みを緩和できます。代表的な成分には以下のようなものがあります。
- ロキソプロフェンナトリウム(例:ロキソニンS)
- アセトアミノフェン(例:タイレノール、子ども用には小児用バファリン)
服用の際は、必ず用法・用量を守ること、6時間以上の間隔を空けることが基本です。効果が出るまでには30分〜1時間ほどかかる場合があります。妊娠中・授乳中や持病がある方は服用前に薬剤師に相談しましょう。
4. 飲酒や喫煙は避ける
アルコールやタバコは血流を促進し、痛みや炎症を悪化させる要因となります。一時的に気が紛れることがあっても、結果として症状が悪化しやすいため、痛みがある間は控えるようにしてください。
夜間救急歯科の費用と注意点
夜間や休日に歯科を受診する際、通常の診療とは異なる費用や対応の違いに注意が必要です。事前に把握しておきたい注意点について説明します。
夜間・休日診療には加算料金がかかる
夜間や休日に対応している歯科医院では、通常の診療報酬に「時間外加算」や「休日加算」などの特別料金が加わります。これらは健康保険が適用される範囲内ですが、通常より自己負担額が高くなるケースがあります。
たとえば、平日昼間に比べて夜間は1,000円〜3,000円程度高くなることもあり、診療内容や医院によって幅があります。診療前に費用の目安を確認できれば安心です。
応急処置が中心となるため、継続治療が必要
夜間救急では、痛みを抑えるための処置や投薬がメインになります。本格的な虫歯治療や神経処置、抜歯といった治療は行われないことが多く、翌日以降にかかりつけ歯科で改めて治療を受ける必要があります。そのため、夜間救急は「根本治療の入口」と考え、痛みが引いたからといって放置しないことが大切です。
保険外の処置や特別な費用にも注意
医院によっては、仮歯や一時的な補綴処置などが保険外対応となる場合があります。こうした場合、保険証を使っても別途数千円〜1万円以上の自己負担が発生することもあるかもしれません。処置内容が不明なときは、医師や受付に遠慮せず費用の説明を求めるようにしましょう。
夜間の歯痛でも焦らず対処を
歯の痛みは突然やってきます。特に夜間や休日など、すぐに歯科医院を受診できない時間帯に限って痛みが強くなることもありますが、そんなときこそ焦らず、正しい知識で対応することが大切です。
応急処置としては、口の中を清潔に保ち、患部を冷やし、市販の痛み止めを活用するのが基本です。そして、地域の歯科医師会や夜間診療所の情報を事前に調べておけば、いざというときにも落ち着いて行動できます。
夜間診療はあくまで応急的な処置が中心となるため、痛みが落ち着いても必ず後日、歯科医院で本格的な治療を受けることを忘れないでください。
伴場歯科医院では、地域の皆さまが普段から安心して通えるかかりつけ歯科を目指し、平日・土曜日に加え、日曜も矯正歯科診療を行っています。ちょっとした違和感やお悩みでも構いませんので、「まだ我慢できるから」と放置せず、気軽にご相談ください。定期的なケアこそが、急な痛みを未然に防ぐ第一歩です。