歯を失ってしまったとき、「インプラント・ブリッジ・入れ歯のどれが良いのだろう?」と悩む方は多くいらっしゃいます。見た目の違いや費用、噛む力、治療期間など、考えるべきことがたくさんあり、正しい選択がわからなくなってしまうこともあるかもしれません。
今回は、それぞれの治療法の仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説します。治療の選択に迷ったときの参考にしてください。
歯を失ったとき、どんな治療法があるの?
歯を失ってしまったとき、そのまま放置してしまうと見た目や噛み合わせが悪くなるだけではありません。顎の骨が痩せたり、残っている歯の位置がずれてしまったりと、将来的にさまざまな問題を引き起こします。
こうした問題を防ぐために行うのが「欠損補綴(けっそんほてつ)」という治療です。失った歯の機能や見た目を補うためのもので、「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」の3つがあります。
インプラントとは?自然な見た目と噛む力が魅力
インプラントは、人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。歯を1本失った場合から、複数本、あるいはすべての歯を失った場合まで対応できます。見た目や噛み心地が天然歯に非常に近く、他の歯に負担をかけない点も特徴です。
仕組みと治療の流れ
「インプラント体(人工歯根)」「アバットメント(支台)」「上部構造(人工歯)」の3つの構成です。インプラント体はチタン製で、顎の骨に埋め込まれることでしっかりと固定されます。
初診で口腔内の検査・CT撮影を行い、インプラントの適応を判断しないといけません。次に外科手術でインプラント体を骨に埋入し、3〜6か月程度の治癒期間を設けて骨と結合させます。その後、アバットメントと人工歯を取り付け、治療が完了します。
メリットとデメリット
インプラントの最大の利点は、見た目が自然で、しっかり噛める点です。入れ歯のように外れる心配がなく、発音にも違和感が出にくいです。また、顎の骨に直接力が加わるため、骨が痩せにくく、周囲の健康な歯を削る必要もありません。
一方で、外科手術が必要なため、全身疾患がある方は治療が難しい場合もあります。また、治療期間が数か月と長く、自由診療となるため費用負担も大きくなります。術後も、インプラント周囲炎を防ぐための継続的なメンテナンスが必要です。
インプラントが適している人
- 見た目や噛み心地を重視したい
- 周囲の歯を削りたくない
- 健康な顎骨と全身状態が良好
- 長期的な治療に前向きで、定期的な通院ができる
ブリッジとは?隣の歯を使って歯の欠損を補う方法
ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を支えとして人工歯を装着する治療法です。部分的な欠損に対して広く行われており、保険診療にも対応しています。比較的短期間で治療が完了し、固定式のため違和感が少ないという点が特徴です。
仕組みと治療の流れ
ブリッジは、欠損部分の両側の歯を削り、そこに連結した人工歯を橋渡しのように装着する構造です。人工歯は、金属、レジン(樹脂)、セラミックなどがあります。
治療の流れは、支えとなる歯を削って型取りをし、技工所でブリッジを作製します。完成後に装着・調整をして固定することで、数週間ほどで治療が完了します。
メリットとデメリット
ブリッジは固定式なので違和感が少なく、噛む力も十分に回復できます。また、保険適用となるケースも多く、費用を抑えて治療ができるのも利点です。
一方で、支えとなる健康な歯を削る必要があるため、将来的にその歯の寿命が短くなるかもしれません。また、清掃性が低いため、歯周病や虫歯のリスクが高まりやすくなります。欠損部の骨は使われないため、時間とともに骨が痩せていく可能性もあります。
ブリッジが適している人
- 隣の歯が健康で、削っても問題ない場合
- 外科手術に抵抗がある
- 短期間で見た目や機能を回復させたい
- 費用をなるべく抑えたい
入れ歯とは?手術なしでできる取り外し可能な治療法
入れ歯は、歯を失った部分を人工歯で補う取り外し式の補綴装置です。部分的に歯を失った場合には部分入れ歯、すべての歯を失った場合には総入れ歯が使われます。保険診療の対象となることも多く、あらゆる症例に柔軟に対応できる治療法です。
仕組みと治療の流れ
部分入れ歯は、金属製や樹脂製のバネ(クラスプ)を使って残った歯に固定します。総入れ歯は、歯ぐき全体を覆う形で人工歯を並べたプレート型の構造です。
治療の流れは、まず型取りをしてから数回に分けて仮合わせ・調整を行い、完成した入れ歯を装着します。治療期間はおおよそ2〜4週間ほどですが、装着後の調整が必要になることもあります。
メリットとデメリット
入れ歯は、ほとんどの症例に適応でき、費用を抑えて治療が受けられるのが最大のメリットです。また、手術は必要ありません。身体への負担も少ない治療法です。
しかし、装着時に違和感を覚える人も多く、話しづらさや食べにくさを感じることもあります。噛む力は天然歯に比べて大きく劣り、ズレや痛みなどのトラブルが生じるかもしれません。部分入れ歯の場合は金属のバネが目立つことがあり、見た目の問題にもつながります。
入れ歯が適している人
- 費用を抑えつつ治療をしたい
- 外科手術を避けたい
- 多数の歯を失っている
- 骨が痩せていて他の治療が難しい
インプラント・ブリッジ・入れ歯を比較!それぞれの違い
それぞれの治療法が持つ特徴を正しく理解し、どこに重点を置いて治療を選ぶかが、納得のいく結果に繋がります。
見た目で選ぶなら?
見た目の自然さを重視する方にとっては、インプラントがもっとも優れています。人工歯が歯ぐきから自然に生えているように見えるため、自分の歯とほとんど見分けがつきません。
ブリッジも、自費でセラミックなどの審美素材を使用すれば、見た目にこだわれます。ただし、保険適用内のブリッジでは、金属の色やレジンの変色が気になるかもしれません。
入れ歯は、部分入れ歯の場合に金属のバネ(クラスプ)が見えることがあり、審美性では劣る傾向があります。総入れ歯でも、人工的な印象が残りやすいため、見た目を重視する方は注意が必要です。
噛み心地や話しやすさはどう違う?
インプラントは、顎の骨にしっかり固定されているため、噛む力が天然歯とほとんど変わりません。発音にも違和感が出にくく、自然な会話が可能です。
ブリッジも、人工歯が固定されているため比較的安定しています。ただし、支えとなる歯に負担がかかるため、長期的にはトラブルが生じることもあります。
入れ歯は、粘膜に乗せたり、バネで支える構造上、どうしてもぐらつきやすく、噛む力が落ちやすいです。慣れないうちは発音にも支障が出ることがあり、慣れるまでの時間が必要になります。
治療にかかる時間の差は?
インプラントは、手術を行い、顎の骨と人工歯根が結合するまでに数か月かかります。治療全体では3か月〜6か月以上を見ておきましょう。
ブリッジは、支台となる歯を削って型を取り、出来上がった人工歯を装着するまでに数週間〜1か月程度で完了します。
入れ歯も数週間から1か月ほどで完成しますが、装着後に違和感や痛みが出ることも多く、調整を繰り返さないといけません。状態によっては完成まで数回の通院が必要です。
お金のこと、保険はきくの?
インプラントは原則として保険適用外の自由診療のため、費用は高額になります。1本あたり数十万円かかることが一般的です。
ブリッジや入れ歯は、保険適用の範囲内で治療することが可能です。ただし、より見た目や機能性に優れた素材を選ぶと、自費診療となるケースもあります。
費用だけで選ぶと入れ歯がもっとも安価です。ただし、将来的に作り直しや修理の頻度が高くなる傾向もあります。
周りの歯や骨に負担はある?
インプラントは、人工歯が独立しているため、周囲の健康な歯に一切影響を与えません。また、顎の骨に刺激が伝わることで、骨の吸収(痩せ)を防ぐ働きもあります。
ブリッジは、両隣の歯を削らないといけません。負担が長年かかることで、支台歯が弱くなるリスクがあり、歯のない部分の骨は刺激が加わらないため、時間とともに痩せていくことがあります。
入れ歯も、歯ぐきや周囲の歯に力が加わるため、支えている歯に負担がかかったり、顎の骨が痩せていくことがあります。部分入れ歯では、バネをかける歯の寿命が短くなることもあるため注意が必要です。
どれくらい長く使えるの?
インプラントは、正しくケアすれば10年、20年と長持ちする治療法です。専用のメンテナンスが必要ではありますが、日々の歯磨きに加えて定期的な検診で安定性を保てます。
ブリッジは、一般的に5〜10年ほどが目安です。支台となる歯の状態次第で寿命が短くなることもあるため、丁寧なケアとメンテナンスが求められます。
入れ歯は、3〜5年程度で作り替えが必要になることがほとんどです。使用するうちにフィット感が低下していきます。食後の洗浄や寝る前の取り外しが必要なため、日々のお手入れにも手間がかかります。
自分に合った治療法を見つけて、健康な未来へ
インプラント・ブリッジ・入れ歯は、それぞれに特徴があり、どれか一つが最適というわけではありません。自分の口の状態、生活スタイル、価値観、予算などをふまえて「自分に合った治療法」を見つけましょう。
どの治療法を選ぶにせよ、一番避けたいのは「歯を失ったまま放置してしまうこと」です。放置している期間が長くなると、将来的に治療の選択肢が減ったり、費用や治療期間が増える可能性もあります。迷っているうちに症状が進んでしまう前に、まずは歯科医師に相談してみることが大切です。
どの治療法が最適か、一緒に考えてみませんか?
伴場歯科医院では、インプラント・ブリッジ・入れ歯すべてに対応できる体制を整え、一人ひとりに寄り添ったカウンセリングと治療をご提供しています。できるだけ削らない・抜かない治療を基本に、ご不安やご希望を丁寧にうかがった上で、最適な選択肢を一緒に見つけていきましょう。