口腔がんとは?早期発見のために知っておきたいこと

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口腔がんとは?早期発見のために知っておきたいこと

胃がんや肺がんは検査をしないと見つかりませんが、口腔がんは「自分で見て発見しやすい」という特徴があります。ただし、早期に見つければ、5年生存率は90%以上です。決して怖いだけの病気ではありません。

しかし、「痛くないから」「そのうち治るだろう」と放置してしまうことが、最大のリスクです。自分と家族を守るための「正しい見分け方」と「セルフチェック」について、わかりやすく解説します。

口腔がんとは、口の中にできるがんの総称です。年間約7,000〜8,000人がかかり、全てのがんの中では1%程度になります。この数字は年々増加傾向にあり、決して「珍しい病気」とは言えなくなってきています。

舌だけじゃない!口の中のあらゆる場所にできる可能性

「口のがん」と聞くと、多くの人が「舌がん」をイメージするのではないでしょうか。確かに、口腔がんの中で最も多いのは舌にできるがんで、全体の約60%を占めています。しかし、がんは舌だけにできるわけではありません。

お口の中の粘膜であれば、あらゆる場所に発生する可能性があります。

舌の縁(側面)や裏側にできやすいのが特徴です。鏡で見えやすい場所ですが、奥の方は見逃しがちになります。

●歯肉(しにく)

いわゆる「歯ぐき」です。下の歯ぐきにできることが多いですが、上にもできます。歯周病の腫れと勘違いされやすい場所です。

●口底(こうてい)

舌の下にある、お口の床の部分です。

●頬粘膜(きょうねんまく)

頬の内側の柔らかい部分です。

●口蓋(こうがい)

お口の天井部分です。硬口蓋(硬い部分)と軟口蓋(奥の柔らかい部分)があります。

高齢者だけ?若い人も要注意

一般的に、がんは年齢とともにリスクが高まる病気であり、口腔がんも60歳代以上の男性に多い傾向があります。ただし、「自分はまだ若いから関係ない」「タバコも吸わないから大丈夫」といった思い込みは禁物です。

近年ではその傾向に変化が見られ、20代〜40代といった比較的若い世代の患者さんも散見されます。また、喫煙習慣のない女性の発症例も報告されています。

「見えるがん」だからこそ、自分で見つけられる

内臓のがんは、自覚症状が出たときにはかなり進行していることが少なくありません。しかし、口腔がんは体の中で「直接目で見ることができるがん」です。

初期の段階では痛みが少ないことも多いのですが、鏡を使えば「色の変化」や「形の変化」を目視で確認できます。

また、指で触れることができるのも大きな特徴です。しこりや腫れを自分の指で感じ取れるため、日常的なチェック習慣があれば、がんが小さいうちに見つけ出すことが十分に可能なのです。

「口の中にできものがあるけれど、これががんかどうかわからない」そんな不安を感じたとき、判断の助けとなるのが「一般的な口内炎」との違いです。もちろん最終的な診断は医師が行います。しかし、警戒すべきポイントを知っておくことは非常に重要です。

形や色に注目!普通の口内炎との違い

一般的な口内炎口腔がんの疑い
痛み痛い(しみる)初期は痛みが少ないこともある
形・境界丸くて境界がはっきりしている形がいびつで、縁が盛り上がり硬い
表面真ん中が白く窪んでいるザラザラ、ボコボコしているまたは深くえぐれている
硬さ周囲と同じくらいの柔らかさ硬いしこりがある
周囲が赤い白い・赤い・赤白まじった斑点が続く
期間1週間〜10日で治る2〜3週間以上治らない

「痛くない」からといって油断は禁物

口の中にしこりやできものがあっても、「痛くないから平気だろう」と考えてしまうことがあります。しかし、口腔がんの初期は、強い痛みがほとんどないことも少なくありません。

そのため、「そのうち治るだろう」と様子を見ているうちに受診が遅れ、しみるような痛みや出血が出てきたころには、病気が進んでいることもあります。「痛くない=安全」とは限らない、という点は覚えておいてください。

首のしこりやリンパ節の腫れもチェック

お口の中だけでなく、首の状態も重要なサインです。口腔がんが進行すると、がん細胞がリンパ液の流れに乗って、首のリンパ節に転移することがあります(頸部リンパ節転移)。

あごの下や首の横を触ったときに、グリグリとした硬いしこりがある場合、それはお口の中の異常に関連しているあkもしれません。風邪を引いていないのに首が腫れている場合は、早めに受診しましょう。

「2週間」が目安!治らないときは迷わず受診を

見た目で判断するのが難しい場合、最もわかりやすい目安となるのが「期間」です。通常の口内炎や、誤って噛んでしまった傷であれば、身体の治癒力によって1週間〜10日程度で自然に治っていきます。

もし、口内炎や傷が「2週間以上経っても治らない」、あるいは「同じ場所にずっとある」「徐々に大きくなっている」という場合は、要注意です。「もう少し様子を見ようかな」と思わず、2週間治らなければ「歯科医院に行くタイミング」だと判断してください。

がんは、ある日突然運悪くできるものではありません。長年の生活習慣や、お口の中の環境が積み重なって発生します。リスク要因を知ることは、予防のための具体的な行動につながります。

最大の要因は「タバコ」と「お酒」の組み合わせ

口腔がんの最大のリスク要因として科学的に明らかになっているのが、喫煙と飲酒です。

●タバコ

タバコの煙には数多くの発がん性物質が含まれており、これがお口の粘膜を直接刺激し、細胞のDNAを傷つけます。喫煙者の口腔がんリスクは、非喫煙者に比べて約7倍とも言われています。

●お酒

お酒(アルコール)には、粘膜の細胞への透過性を高める作用があります。つまり、お酒を飲むことで、タバコの発がん性物質がより深く粘膜に染み込みやすくなってしまうのです。

放置したむし歯や合わない被せ物も?慢性的な「刺激」に注意

タバコもお酒もやらない人が口腔がんになることもあります。その大きな原因の一つと考えられているのが「機械的刺激」です。これは、物理的に粘膜が傷つけられ続ける状態を指します。

欠けた歯やむし歯

尖った部分が舌や頬に当たり続けている。

合わない入れ歯・被せ物

サイズが合わず、動くたびに粘膜を擦っている。

歯並び

内側に傾いた歯が、常に舌に接触している。

「舌の同じ場所がいつも歯に当たって気になる」という状態を何ヶ月も、何年も放置していませんか? 慢性的な刺激によって傷ついた細胞が修復される過程でエラーが起き、がん化することがあります。

お口の中の「引っかかり」や「当たり」を歯科医院で調整してもらうことは、立派ながん予防なのです。

お口の中を清潔に保つことが予防の第一歩

お口の中が汚れていて、歯垢(プラーク)や歯石がたくさん付いている状態も良くありません。細菌が多い不潔な環境では、慢性的な炎症が起きやすくなります。また、アセトアルデヒドなどの発がん性物質を作り出す細菌も存在します。

毎日の歯磨きと歯科医院での定期的なクリーニングで、お口の中を清潔に保つことは、むし歯や歯周病だけでなく、がんのリスクを下げるためにも非常に重要です。

それでは、実際にお口の中をどうやってチェックすれば良いのでしょうか。月に1回、歯磨きのついでで構いません。「セルフチェック」の習慣を取り入れましょう。明るい場所で鏡を用意し、入れ歯を入れている方は外してから行ってください。

唇、舌の裏、歯ぐき…見るべき場所と手順

ただなんとなく口を開けるだけでなく、指を使ってしっかり確認するのがポイントです。

お口の「上」と「下」

唇をめくって、内側の粘膜や歯ぐきの色、形を確認します。

頬の内側

指を入れて頬を外側に引っ張り、奥の方までしっかり見ます。上下の奥歯の後ろ側も見逃しやすいポイントです。

あごの天井(口蓋)

頭を後ろに反らして、上の歯の内側、天井部分を見ます。

舌(最重要)

まずは舌を前に突き出します。次に舌の先を持って横に動かし、舌の側面と裏側をよく観察します。ここはがんができやすい要注意ポイントです。

「白い斑点」や「赤い変色」はありませんか?

形だけでなく、色の変化にも注目してください。

●白板症(はくばんしょう)

粘膜の一部が白く変化し、こすっても取れない状態。がん化する可能性のある「前がん病変」の一つです。

●紅板症(こうばんしょう)

粘膜が赤くただれたようになっている状態。白板症よりもがん化するリスクが高いとされています。

早期発見の最大のメリットは、高い治癒率と、治療後の生活の質(QOL)を守れることです。

治る確率がグンと上がる

口腔がんの治療成績は、進行度によって大きく変わります。初期(ステージI)で治療できれば、5年生存率は90%以上と非常に高い治癒率が望めます。しかし、進行するとその確率は大幅に下がってしまいます。

手術の範囲が小さく済み、生活への影響が少ない

早期発見なら切除範囲は最小限で済み、入院も短く、治療後も食事や会話をこれまで通り楽しめます。しかし進行すると広範囲の治療が必要となり、日常生活への負担が大きくなってしまうかもしれません。「今の生活」を維持するためにも、違和感があればすぐに受診することが大切です。

口腔がんを防ぐためには、お口の中を清潔に保ち、合わない入れ歯やむし歯などの「刺激」を取り除くことが何より大切です。定期的にクリーニングやメンテナンスを受けていただくことは、こうしたリスクを減らすだけでなく、プロの目で異変を早く見つけるチャンスにもなります。

「治療」だけでなく「予防」と「安心」のために、ぜひ伴場歯科医院をご利用ください。